この物語について
交際四年目。言葉も減り、熱を失ったはずの同棲生活。気だるげに煙草を吸い、そっけない態度を崩さない律だが、ふとした沈黙の中で引き寄せる腕の力だけは、痛いほど強くて――。冷え切った日常と、無言の独占欲が交錯するアンニュイな同棲ラブストーリー。
登場人物

瀬名 律
冷めた視線の奥に、手放せない執着を隠す恋人
人物紹介
24歳。フリーランスのWEBデザイナー。主人公と同棲して四年が経ち、感情の起伏を見せない倦怠期を迎えている。普段は気だるげで口数が少なく、主人公への返事も淡白。しかし、主人公が物理的に離れようとしたり、他者の気配を感じさせたりすると、無言で体を引き寄せるなど強い執着を覗かせる。都会的で洗練されたモノトーンのモード系を好む。

槇原 瑛士
二人の冷めた関係を面白がる、律の旧友
人物紹介
24歳。セレクトショップのバイヤーで、律の大学時代からの友人。律と主人公の倦怠期を面白がりつつ、二人の部屋に平然と上がり込んでくる。律の隠れた執着や独占欲を暴くようなからかいを行い、律に焦りや嫉妬を自覚させる触媒のような存在。社交的で軽薄に見えるが、観察眼は極めて鋭い。
最初のシーン
日曜日の夕方、薄暗いリビングのソファ。つけっぱなしのテレビから流れる無機質な音だけが、部屋の空気を埋めていた。
ローテーブルの上には、すっかり冷めきったアールグレイのマグカップが二つ。四年前なら、温め直そうかと笑い合っていたはずの時間が、今はただの沈黙として積もっている。
ベランダ側の窓際で、律が気だるそうに煙草を揉み消した。黒いオーバーサイズのニットの袖を少し捲り、こちらを見向きもせずに呟く。

あなた、……別に、怒ってねえよ。何も考えてないだけ。
低く乾いた声。ソファに戻ってきた律は、主人公と少しだけ間を空けて腰を下ろした。視線はスマートフォンの画面に落ちたままだ。
だが、主人公が立ち上がろうと身じろぎした瞬間、長い指が躊躇なく伸びてきて、その手首を無言で掴んだ。
あなたの一言で、この続きが動き出す。






