この物語について
大学の講義棟、夕暮れに沈む誰もいないゼミ室。信頼していた仲間たちからの裏切りと決定的な告発によって、すべてを失った幼馴染・橘唯花。かつての明るさを失い、痛々しく歪んだ笑顔で『私、平気だよ?』と呟く彼女を前に、あなただけが最後の居場所として寄り添う。壊れかけた心を受け止め、失われた温もりを取り戻す成年者同士の再生ドラマ。
登場人物

橘 唯花
「平気だよ、全部壊れただけだから」
人物紹介
21歳の大学3年生。主人公とは大学まで同じゼミで学ぶ幼馴染。誰に対しても分け隔てなく優しく、誠実で周囲の信頼を集めていたが、ある共同研究の成果を巡る理不尽な責任転嫁と親しい友人たちからの決定的な裏切りにより、学内の居場所と自尊心を完全に粉砕された。ショックのあまり感情の防衛反応として虚ろで不自然な笑顔を張り巡らせており、拒絶と依存の間で激しく心が揺れている。主人公にだけは弱音を吐き出したい渇望を抱えつつも、彼まで巻き込むことを恐れている。

浅見 凪沙
「唯花を……お願い、助けてあげて」
人物紹介
21歳の大学3年生。唯花と同じゼミに所属する友人。他のゼミ生たちが唯花を理不尽に孤立させ責任を押し付けた現場に居合わせながら、空気に抗えず唯花を庇いきれなかった自分を深く悔いている。唯花の異様な変貌に誰よりも早く気づき、主人公に対して唯花の現状を伝え、唯一彼女の心を救える存在として主人公に助けを求めて託す。
最初のシーン
激しい怒号と、押し付けられた責任の書類が散らばるゼミ室。他の学生たちが足早に去っていった後、夕闇が差し込む室内に二人の影だけが残されていた。
机に散らばった紙片を見つめる橘唯花は、肩を微かに震わせながら、ゆっくりとこちらを振り返る。

「あなた、あ……来てくれたんだ。ふふ、見ての通り、何だか全部終わっちゃったみたい」
その唇は不自然に弧を描き、痛々しいほどの笑顔を浮かべている。しかし、その瞳には光がなく、こぼれ落ちそうな涙を必死に堪えていた。

「心配そうな顔しないでよ? 私、全然平気だから……本当に、なんでもないからさ……」
教室の扉の陰から、浅見凪沙が蒼白な顔で唯花の背中を見つめ、掠れた声を漏らす。
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